電動歯ブラシってどうなの?人気が高まっている理由は何なのか
電動歯ブラシでも手磨きブラシでも、歯と歯ぐきの健康を保つことは可能です。
しかし、近年の傾向として、手磨きブラシよりも電動歯ブラシを使用する人が増えています。
イギリスでは成人の約3人に2人(67%)が電動歯ブラシを使用しており、手磨きブラシよりも電動歯ブラシを使用している人が上回った調査報告(2020年)も出てきています。
なぜ手磨きブラシよりも電動歯ブラシを選ぶ人が増えているのか。
本記事ではその理由についてお伝えしていきます。
電動歯ブラシの良い点も悪い点もお伝えします!
電動歯ブラシってどうなの?と思っている人はぜひお読みください。
オーラルケアの意識が高い国で電動歯ブラシが人気
電動歯ブラシは、オーラルケアの意識が高い国で使用率が高い傾向があります。
2021年のパナソニックによる調査では、オーラルケアの意識が高いドイツでは電動歯ブラシの使用率が高いことが分かっています。(*1)
以下は、日本・アメリカ・ドイツの「口臭対策に自信があると回答した人の割合」と「電動歯ブラシ使用率」を示したものです。
国 | 口臭対策に自信がある人 | 電動歯ブラシ使用率 |
---|---|---|
日本 | 32.0% | 16.0% |
アメリカ | 54.0% | 39.0% |
ドイツ | 74.0% | 53.0% |
口臭対策に自信がある人の割合が多い「アメリカ」「ドイツ」では、電動歯ブラシの使用率が日本よりも高いです。
また、冒頭でもお伝えしたように、イギリスでは成人の約3人に2人(67%)が電動歯ブラシを使用しています。
世界的に手磨きブラシよりも電動歯ブラシを使用する人が増えている傾向にあるといえるでしょう。
電動歯ブラシを使用する人が増えている理由
電動歯ブラシを使用する人が増えている理由は以下のとおり。
- 昔より電動歯ブラシの価格が手頃になったから。
- 手磨きブラシよりも効果的に歯垢除去できるから。
- 歯磨きの時間管理が手磨きブラシよりも簡単だから。
- AIによるアシスト機能など最新テクノロジーの恩恵を受けられるから。
昔より電動歯ブラシの価格が手頃になったから
電動歯ブラシの価格は以前よりも安価になりました。
例として、パナソニック ドルツの2015年モデルと2023年モデルを比較します。
項目 | EW-DE54 | EW-DA57 |
---|---|---|
発売日 | 2015年9月 | 2023年9月 |
グレード | 最上位モデル | スタンダードモデル |
販売価格 | 20,440円 | 16,818円 |
振動数 | 31,000回/分 | 31,000回/分 |
ブラッシングモード | ノーマルモード ソフトモード ガムケアモード | ノーマルモード ソフトモード センシティブモード |
充電時間 | 約1時間 | 約2時間 |
使用時間 | 約15日間 | 約22日間 |
押しつけ防止 | 無し | ある |
2015年に発売された「EW-DE54」と2023年に発売された「EW-DA57」を比べると、価格に大きな違いはありません。
一方で、押しつけ防止センサーが搭載されているのは2023年9月に発売された「EW-DA57」です。
つまり、性能面では2015年の最上位モデルよりも、2023年のスタンダードモデルのほうが優れています。
昔よりも高性能な電動歯ブラシを安く購入できるようになったので、電動歯ブラシの使用者が増えていると考えられます。
手磨きブラシよりも効果的に歯垢除去できるから
電動歯ブラシは手磨きブラシよりも効果的に歯垢除去できると考えられています。
非営利団体「コクラン」の調査報告では、手磨きブラシよりも歯垢と歯肉炎を減らすのに効果的であると記述があります。
このレビューでは、手動歯ブラシと比較して、長期的および短期的に歯垢と歯肉炎を減らすのに電動歯ブラシが手動ブラシよりも効果的であることがわかりました。 プラークの 11% の減少 (Quigley Hein (Turesky) 指数) が 1 ~ 3 か月で示され、3 か月以上でプラークの 21% の減少が示されました。
Corhrane Libraryより引用(筆者翻訳)
手磨きブラシは手や腕を動かすことで歯垢を除去します。
そのため、手磨きブラシはヒューマンエラーによる磨き残しが生まれてしまう可能性があるのです。
多忙で疲れ切った状態のとき、歯磨きに集中できていない方は多いのではないでしょうか。
一方で、電動歯ブラシだと振動による力で歯垢を除去するため、ブラシを歯になぞるように当てるだけで歯垢を除去できます。
「短時間で楽に歯磨きしたい」という場合には、電動歯ブラシの使用がオススメです。
歯磨きの時間管理が手磨きブラシよりも簡単だから
手磨きブラシだと、歯磨きの時間がバラバラで感覚的になってしまいます。
多くの電動歯ブラシには、30秒ごとに振動が一時停止する機能があります。
この機能は「カドペーサー機能」と呼ばれたり、「磨き時間お知らせタイマー」と呼ばれたりします。
電動歯ブラシの振動が止まることで、歯磨き時間の管理が非常にラクです。
電動歯ブラシの歯磨き時間は約2~3分が推奨されているので、以下のようにブラッシングしましょう。
- 口の中を上下左右、4分割するイメージを持つ。
- 1箇所あたり30秒磨く(振動が止まったら30秒経過と判断)。
- 計4箇所磨くと推奨の2分間歯磨きできる。
日によって歯磨きの時間が長すぎたり短すぎたりする人は、電動歯ブラシの導入を検討してみてください。
AIによるアシスト機能など最新テクノロジーの恩恵を受けられるから
近年では電動歯ブラシに「AI機能」を搭載している機種が登場しています。
電動歯ブラシ名 | AI機能 |
---|---|
ソニッケアー プレステージ9900 | SenseIQテクノロジー |
オーラルB iO10 | AIブラッシングガイド |
ソニッケアー プレステージ9900では、「SenseIQテクノロジー」というAI機能があります。
このAI機能では、
- 歯磨きの強さ
- 歯磨きの動作
- 歯磨きの範囲
- 歯磨きの時間
といった情報を検知し、リアルタイムに改善を促してくれるのです。
また、オーラルB iO10では、「AIブラッシングガイド」というAI機能があります。
このAI機能では、
- 歯の外側
- 歯の内側
- 歯のかみ合わせ面
を立体的に磨き残しを検知し、磨き残している箇所を表示してくれます。
これらのAI機能は今後ますます進化することが予測され、電動歯ブラシは今よりもっと便利になっていくでしょう。
電動歯ブラシにもデメリット・注意点は存在する
電動歯ブラシには良い点だけではなく、デメリット・注意点も存在します。
- 手磨きブラシよりも歯や歯ぐきへの刺激が強い。
- 研磨剤を含む歯磨き粉を使用してはいけない。
- 歯を磨いたつもりになりやすい。
手磨きブラシよりも歯や歯ぐきへの刺激が強い
手磨きブラシよりも歯や歯ぐきへの刺激が強い点は、電動歯ブラシのデメリットといえるでしょう。
歯や歯ぐきへの刺激が強いとしても、正しい使い方をすれば全く問題ありません。
しかし、電動歯ブラシを誤った使い方で歯磨きすると、手磨きブラシよりも危険です。
たとえば、電動歯ブラシはずっと同じ歯にブラシを当て続けてはいけません。
また、ブラシを歯に強く押し当てることもNGです。
そのため、電動歯ブラシではブラシを優しく歯に当てて、ゆっくりとスライドさせるように動かす必要があります。
電動歯ブラシを使った経験がない人は、過圧防止機能(押しつけ防止センサー)などが搭載されている機種から使い始めるのがオススメです。
研磨剤を含む歯磨き粉を使用してはいけない
電動歯ブラシでは、研磨剤を含む歯磨き粉を使用するべきではありません。
各社電動歯ブラシメーカーが「研磨剤入りの歯磨き粉の使用」を避けるべきだとアナウンスしています。
パナソニック ドルツ
歯磨き剤なしでも歯垢は十分に落とせますが、ご使用いただく場合は電動歯ブラシ用の歯磨き剤をおすすめします。歯や歯ぐきを痛めないために、やに取り剤・美白用など研磨剤が多く含まれているものはお控えください。
ドルツの正しい使いかた(磨きかた)より引用
ブラウン オーラルB
ブラウンオーラルB 電動歯ブラシは高速回転により歯垢を除去していますが、通常の歯磨き粉を使用すると研磨剤により、歯が削れてしまったり、口の中が泡だらけになることもあるので、ジェルタイプのものをおすすめしています。
電動歯ブラシ「オーラルB」の正しい使い方・磨き方より引用
フィリップス ソニッケアー
ソニッケアーは音波水流によって磨くため、歯磨き粉なしでも使用できます。使用する際も米粒程度で結構です。
ソニッケアーの使い方、磨き方(歯みがき粉の使い方)より引用
一般的な歯磨き粉(ペーストタイプ)には研磨剤が含まれていることがほとんどです。
電動歯ブラシを使用する場合は、研磨剤無配合の歯磨き粉を使用するようにしましょう。
歯を磨いたつもりになりやすい
電動歯ブラシを使って歯磨きしていると、歯を磨いているつもりになりやすいです。
電動歯ブラシで歯磨きした後は、歯がツルツルになるので磨き終わったと錯覚してしまいます。
しかし、実際にはブラシを歯に当てた箇所だけがツルツルになっていて、ブラシが当たっていない箇所は磨き残しになってしまうのです。
そのため、歯間や歯周ポケットなどブラシが届きにくい箇所もきちんと意識してブラシを当てる必要があります。
また、電動歯ブラシでも手磨きブラシでも歯を完全にキレイにすることはできません。
ブラシが届かない歯間は「歯間ブラシ」や「フロス」を使用しましょう。
歯ブラシだけでは60%程度の歯垢しか取り除くことができないと言われており、デンタルフロスや歯間ブラシを使うと90%近くのプラークを取り除くことができると言われています。(*ライオン歯科衛生研究所)
まとめ
本記事は電動歯ブラシってどうなの?と思っている人に向けた内容でした。
近年、世界的に手磨きブラシよりも電動歯ブラシのほうが人気が出てきています。
その理由は以下の通りだとお伝えしました。
- 昔より電動歯ブラシの価格が手頃になったから。
- 手磨きブラシよりも効果的に歯垢除去できるから。
- 歯磨きの時間管理が手磨きブラシよりも簡単だから。
- AIによるアシスト機能など最新テクノロジーの恩恵を受けられるから。
また、電動歯ブラシには以下のようなデメリット・注意点も存在します。
- 手磨きブラシよりも歯や歯ぐきへの刺激が強い。
- 研磨剤を含む歯磨き粉を使用してはいけない。
- 歯を磨いたつもりになりやすい。
電動歯ブラシの良い点も悪い点も理解した上で、手磨きブラシから移行すべきかどうかを検討してみてください。
*1:【日本・アメリカ・ドイツのオーラルケア事情を徹底調査】日本はオーラルケア後進国!?海外では「歯」が印象を左右する!~歯学博士に聞く!人生100年時代に知っておくべき正しいオーラルケア方法~